*『THE 伊勢正三』

 若い人は知らないかも知れない。「なごり雪の・・・」と言えば、「あ~」なんて言うかな。彼の叙情的なとってもウエットな歌詞が好きなのだ。一方で双璧をなすのが角松敏生で、彼の映像が見たいだけで、ここ3ヶ月WOWOWと契約している。彼のプロフェッショナルな音作りが(そしてもう少し若い頃の、彼のエッチさ、下心を含んだ歌詞が)metooの琴線を震わすのだ(ホントにそうか?)。
 好きになったものをそうそう嫌いになれない。好きな球団は日米とも強いとは言い切れないが、(そして他のチームのファンだったら楽しいだろうにな、って思うけれど)浮気する気にはなれないのだ。不器用だなって、言われたとしても。
 
  『THE 伊勢正三』はレーベルを越えたオールライブの4枚組アルバムだ。その中には実際アリーナで聞いた曲ももちろん入っている。氏は(勝手な想像だが)、叙情詩とギターテク、そしてフィッシング技術を磨いてきただろうが、稲葉浩志のようにはノドをいたわってはこなかったのだろうか。耐えきれないようなだみ声の時もある。ライブ会場ではあまり気にならなかったけれど。

 このアルバムは4枚組とは言え、今時5500円だ。アマゾンで予約すれば、レコード大ジャケットと、小さいショッピングバッグが付くという特典があったが正直微妙だ。この2つ一体どうすれば良いというのだ? スーパーの買い物時に持って行けと!?
 レコード会社とすればCDに金出す世代は、あと少しすると鬼籍に入って絶滅する。売り出すなら今だ! そんな感じか。
 
 かぐや姫が何度か再結成するのに対し、風は滅多に吹かない。大久保一久と何かあったの? 正やん? それでも何年か前に正やんのコンサートに久保やんが随行するって言うので期待高まったけれど、直前倒れそのままになってしまった。発作の時にはまだ50代だったんだっけ?
 50も後半になればもう何があっても不思議じゃ無い年齢だ。信長は49歳で逝った。キリストは33歳だ。やれるうちにやっておかなきゃ損だ。
 これだけDVDだブルーレイだ、って言う時代なんだから、金額倍にしてライブ見せろ。買うぞ。正やんの「夢のような印税暮らし」に貢献するぞ。「君と歩いた青春」だったんだから。

 

 

*『チヨ子』(宮部みゆき著)

 短編集。さらりと読める。そしてちょっとした感動も得られる。青少年よ、宮部みゆきは良いぞ。読みながら日本人特有の「じっとり」とした湿度を伴う日本の気候っぽい感覚を味わう。そこが宮部みゆきの特徴でもある。
 収録の短編「いしまくら」なんて怖い怖い。日本のあちらこちらに転がるおばけなどの民間伝承がちらりと出てくるのも彼女の特徴か。直木賞受賞の2000年前後の、割と珠玉のミステリーがつまっていて、ちょっと時間のある時や待ち時間に持ってこい。ああ、思えばこの頃から江戸時代あたりに宮部みゆきは思いを寄せていたのかも知れない。現代物の新作が読みたい。

 

 

*『権力に告ぐ』

 ちらしに「韓国初登場1位」とあるが、ちらしは大抵気前の良いことが書いていある。そんなにすごいのか・・・? WOWOWで、俳優町田啓太、一押しの本作を観る。
 2000年代初頭、アジア金融危機の火種は韓国にも及び、IMFの緊急融資がおこなわれた頃の話である。大韓銀行が外国ファンドに買収される中での不正があり、その不正隠しのための偽装殺人がおこなわれる。アメリカ映画によくあるパターン、それが韓国でもあったと・・・? based on true story、正義と真実を追いかける連中と、巨額の金や逆らいがたい欲望に負けていく連中の、息詰まる攻防が繰り広げられるが・・・勝つのはどっちだ。
 エンドクレジットで、この一連の不正で未だ誰も逮捕されていない、と出てきてやりきれない。現実は甘くないぞ、そんなやりきれなさも含めて、重厚な社会派作品に仕上がっている。

 

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*『82年生まれ、キム・ジヨン』

 この映画が気になったのは、主人公の夫:デヒョンを演じるのがコン・ユで、このちょっと見、若い時の中村雅俊似の優男が、「トッケビ」演じて親近感があったから。キム・ジヨン演じるチョン・ユミとは「新感染」「トガニ 幼き瞳の告発」で夫婦役を演じ、今回が夫婦として3作目だ。ちょっと羨ましいお似合い夫婦なのだ。
 寿退社したジヨンは育児と家事に忙殺され、ストレスから徐々に崩壊していく。新年のご挨拶で夫の実家に行くと、ジヨンは他人が憑依したかのような言動をする。(本人はその時の記憶は全くない)。夫のデヒョンは本人にも告げることができない。
 仕事と子育てをめぐる環境は、ちょっと前の日本にあった(今でもあるか?)ことと同じ。男側からの無理解も一緒。思えば、「受験戦争」は日本よりもひどい。知らない人も多いが、「少子高齢社会」(すでに「少子高齢化社会」ではなくなりました!)も、韓国の方が先行している。日本が抱えている社会問題は、韓国でも同じなのだ。
 どのようにジヨンが、一人の人として輝いていけるのか? 重いけれどとっても大事な問題に、真っ直ぐ向き合った作品。たまにはこういう作品も良いよね。

 

 

*『否定と肯定』

 

 

 何じゃ? この哲学的なタイトルは? 誰がこのタイトルで映画館に足を運ぶ? 配給会社どうした、頑張れよ! 
 そもそも日本で人気の無い「法廷もの」。metooはちなみに大好物なのだ。小学生の頃ペリー・メイスンやたら読んでいたせいか?

 法廷もので、「いやぁー、小生頑張ったのですが、結果は,、いやはや残念でござった!」なんて作品には出合ったことがないので、「勝訴」は最初から分かっているので、そこまでに至る上り坂下り坂が見せ場である。
 物語は「ホロコースト」なんてなかった!と言う英歴史学者と、それに真っ向から反論する米ユダヤ系歴史大学教授(レイチェル・ワイズ)の名誉をかけての戦い。レイチェルが著書の中で英歴史学者を侮辱したと英で訴えられる。なぜ英でかというと、米では訴えた方が証拠を集めるのに対し、英では訴えられた方が証拠を集めるから。日本人から見ると米英大差ないように思えるが、色々違うのね。
 何よりレイチェル! 「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」「マイ・ブルーベリー・ナイツ」ですごい魅力を感じたが、彼女、ケンブリッジ大学卒の才女なんだ。007(D・クレイグ)と結婚してからあまり見てなかったので、嬉しかったよ。鋭い目つきは変わっていなかったが、しっかりおばさんになっていた・・・と言っちゃあ悪いか。人はこんな感じで年齢を重ねるんだなぁ。

 「ホロコースト無かった」、なんて言う人いるんだぁ。ドイツ人のネオナチの方だけで無く、米英にも多分にいる。劇中の歴史学者は、バトル・オブ・ブリテンで、爆撃されていてもヒトラー信奉者だったと。ヒトラーって言う人はつくづくスゴイ。
 思えばトランプの頃にもフェイクニュースを信じる人はゴマンといた。コロナワクチン打つと、体内にマイクロチップが入ると信じている人も日本ゴマンといる。信じるバカもんは、言っちゃあ何だが、もう仕方ない。ただ最初に言い始めた奴は間違いなく悪意があるよな。

 「何であんなに優秀なドイツ民族が、ヒトラーに踊らされて、ホロコーストのようなひどい仕打ちができたのだろうか?」 その辺をしっかり歴史認識しておかないと、人類は同じ過ちをまた繰り返してしまうだろう。だって歴史は繰り返しているから。しかも超拡大再生産で。

*『名探偵ポワロ カーテン ポワロ最後の事件』

 土曜夕方時間があれば好んで観ていたが、全部で70作もあるので、以前見たもの・見たことあるようなものなどがゴッチャになっている。でもポワロとヘイスティング大尉が別れてから(の作品)は基本見たこと無かったんだよね。すごく良いコンビだったのに。ミス・レモン、ハロルド・ジャップ警部も、後から思えば皆若かったんだね~。
 1番新しい13シーズンでは、ちょくちょくヘイスティング大尉が出てくるが、おじいさんになっていてそりゃあ悲しい、映画の人は同じ作中年齢を重ねないものなのに。
 先日最終話が放送されて来週の土曜から「刑事コロンボ」になっちゃうんだけれど、最終回は意外な展開でビックリ、かつ感動ものだった。ヘイスティング大尉は相変わらず事件に1mmもたどり着けないし、殺人さえ企てているし。ポワロはドンドン老けて歩けなくなっているし。こんなんで真相に辿り着けるの・・・? 意外性はすっごくあったけけれど、こんな悲しい最終回も無いなぁ・・・。アガサのシリーズの中でも、ポワロやっぱり死んじゃうのかな。

 

 

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*『中国行きのスロウ・ボート』(村上春樹)

 

 

 

(読んだことあったっけ?) 最後の「シドニーのグリーン・ストリート」は確かにある。それ以外は自信が無い(本棚にも無い)。
 全7編の短編集。冒頭に「最初4編が『1973年のピンボール』発表後、残り3編が『羊をめぐる冒険』の後に書かれた」と本人が書いている。正直残り3編の方が、春樹ワールド全開で良い。知り合いの文学部国文科出身者は、この作品のようなわけの分からない所が大嫌いなんだろう、きっと。
 『羊~』が特に好きな作品なので、羊男が出てくると密かにワクワクしてしまう。最近は出てこなくて淋しいのだけれど。