*これは面白い!『犯人に告ぐ』(雫井脩介)

 ハズレくじを引くのがイヤで、未読の作者を避けたがっている。この人の作品は初めてだ。裏書きに「2004年ミステリー第1位」に惹かれて上下巻を買ったんだけどね。結論から言えば、いやぁー良かった! 買って正解。
 設定が良いよ。(豊悦を主役に映画化されている)が、映画化さえ最初から目論んでいたんじゃないか? そんな邪推さえしてしまうほど憎たらしい出来だ。なおこの作品で大藪春彦賞を得た後の第一作が『クローズドノート』だと言う。おぁーあの沢尻エリカ様がご出演なさった割に、良いデキで感動したあの作品の著者かぁ。多彩な持ち主だなぁ。
 この頃ハバを利かせるキャンパスギャルについての描写がなかなか良い。「植草が入っていたテニスサークルのメンバーにも、すらりと生足と物欲しげな眼と過剰な明るさと場所を選ばない嬌声を武器にした女たちが手頃に集まってきていた」。そうなんだよ、「場所を選ばない嬌声」・・・これがいわゆるクラス内カースト1軍の女たちが使う技は。よく描けているよ。
 本作での不満な点を敢えて探すなら、エンディングの安易さかな? ほかのデキが良いだけに、あまりにデフォルメしすぎてキャラが立っている「小川かつおからしてダメだしさせてもらおう。とは言え、それでこの作品の面白さを否定する気は毛頭無い。
 面白い作品を読むと、映画化が気になる。metooのアンテナに微塵も触れていないのが、心配だがいつか見てみたい。
 キャリア組が、常に捜査の足を引っ張るけれど、上下関係から責任はいつも現場が尻ぬぐい・・・今回も巻島警視引責の直接の原因は上司の捜査本部設置遅延にあるのだが、責任は全て現場組が負うことに。これって当時の『踊る大捜査線』の影響なの? それともキャリア組って、人間的にダメなヤローの集まりなの? 教えて、現場の方ー!!

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)