旅の読書1:『男子の本懐』城山三郎 

 昭和初期の政治家の話と聞いていたが、浜口雄幸は歴史の授業で「東京駅で狙撃された」くらいにしか知らなかった。ましてや大蔵大臣の井上準之助にいたっては。
 発刊された1980年頃だと、まだまだ浜口雄幸のことを知っている日本人も多くいたんだろう。話は暗いくらい昭和初期のこと。ちょっと前に関東大震災があり、その後昭和金融恐慌世界大恐慌などもあって「金本位制復活」「緊縮財政」「軍縮」など、やらねばならない、けれどそれは「火中の栗を拾う」ごとく、誰がやっても不人気なことで、ヘタすれば命を失うかもしれない。それに敢然と立ち向かった政治家の話だ。
 命を失うかもしれない・・・だがそれで死んだとしても「男子の本懐だ」と浜口雄幸は言いいきる。その辺の覚悟が明治人にはあったんだろう。正直読むまでこんな大変な話だとは思わなかった。ただ平成・令和の時代になれば、不況の際に緊縮一辺倒で良いのか?とか対ドル為替相場円高に設定しすぎとちゃうの? とか思うことはあるんだけれど。
 Anyway,旅行でじっくり読書する時、たまにはこういう骨太の本を選ぶのも悪くない。きっと浜口雄幸の名を聞く機会があった時には、じっくり読んだ花咲線の光景が思い起こされることだろう。