*『もし僕らの言葉がウィスキーであったなら』(村上春樹)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫)

年末に春樹ものを3冊買った。その2冊目。(おそらく奥様が撮ったと思うのだけれど、その割にプロっぽいので、さすがにカメラマンが同行したのかなと疑いたくなる)これぞ外国!と思わせる見事な写真と、彼の旅行記のようなエッセーが織りなす小冊子なのである。正味2時間もあれば読み切れるだろう。
 これは氏がアイルランドを旅した時の(主にシングルモルトについて)彼が思ったことがつらつらと語られているのだ。
 以前、某C大学の授業でアイルランド出身の教授が、アイルランドについての英文エッセーの宿題を出した。知人はアイルランド出身の人権活動家についてネットで拾ってきたような文章をまとめやがったが、冗談じゃ無い!
アイルランドなら、アイリッシュウィスキーだろうが、馬鹿者め!」
と半分くらいのボリュームで言ってやった。それができなくてもせめて「アイリッシュコーヒー」のはずだ。おそらく教授は地球の反対側の故郷のパブを思い出し、泣きながらA評価を下したはずだ。もしかしたら立川にあるアイリッシュパブに学生を連れ出したかも知れない(笑)
一般に『アイランズ』の名で知られるアイラ島に行き、それぞれの蒸留所でシングルモルトを楽しむ・・・っていう、なかなかできない体験を楽しむ。ウィスキーは本来苦手なmetooは知らないことばっかり。「氷を入れない」とか、「10年ものには10年ものの、15年ものには15年ものの良さが・・・」なんていう文章には、なるほどなぁと頷いてしまう。
 文中、夜眠れずに訪れたパブで、スーツを着込んで来た老紳士(そもそも何でわざわざスーツなの?)のくだりがある。何も語らず目を合わせただけでいつものように一杯のシングルモルトが出てくる。ポケットからは何枚かのコイン。バーテンダーもコインを数えること無く受け取る。周囲には全く目もくれず何かを考えながら、一口また一口。それが毎日の儀式のようにおこなわれているだろう・・・なんてエピソードは、映像が目に浮かびたまらない。
 本棚に飾っておいて、たまにこの半分写真集の1冊を眺めながらシングルモルトを傾ける・・・そんな事ができたなら、そんな1冊だと思う。
ブッシュミルズ 700ml

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