*『古道具 中野商店』(川上弘美著)

古道具 中野商店

もしかしたら何かの全集のかたわれで読んだことがあるかも知れない。しかし、こうして単行本を手に取るのは初めてである。外国語に訳された最近の日本人としては、売れている作家である。でもあまり女流作家は得意じゃない。
ラノベなどと違って、語彙の豊富な作家だ。まずそう思う。「わたしがへどもどとと言う」 女性ならではの描写は多いと思う。男ならその1行入れないでしょ? とかね。
知り合いに冴えない中野さんがいる。だから主人公の中野さんは、私の中の中野さんだ。(笑) しかも意外にかぶっている(笑)
男女の仲の表現が微妙に良いよ。この表現はティーンにはできないね!
物語の主人公はヒトミちゃんだ。一人暮らしで化粧っ気もない。同僚のタケオは高校で苛められ小指を失って高校中退で今にいたる。店の経営者中野さんはいい歳をしたオジサンだが、なぜかそこそこモテて営業時間中に女とラブホにしけこんだりしている(そこをヒトミちゃんに目撃されたりする)。タケオのことは好きなんだか嫌いなんだか。ゆる〜い感じで主人公たちの物語は、ゆっくり、しかし気づくと季節がバンバンと流れて終わってみれば数年は楽に過ぎている。そんな感じで進んでいる。
川上弘美は結構有名な作家だ。そして力がある。こういう本を手に取ってみるのも秋の夜長には良いと思う。

古道具 中野商店 (新潮文庫)

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神様 (中公文庫)

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七夜物語(上)

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