くぅ(4)

 くぅの世話は全部早智子がした。というより、家族には本のちょっとしか触らせなかった。学校から帰ると、ペットハウスのくぅを抱き上げ、チュッしてハグした。早智子が食べる物は美味しそうになんでも食べた。
「ねぇ、スナック菓子あげたら動物にはよくないのよ」
 ママはそういうんだけれど、美味しそうに食べるんだなぁー、これが。チーズをあげればパクパク・・・ネズミの好物だから当たり前かな? 試しにピザあげたらこれもパクパク。チョコでもグミでも何でも食べた。太るか心配だったけど、気持ち丸くなった?ってくらいだった。不思議なのは、急にお腹が痛くなった時。いつもは大好きな唐揚げを、食べられないからって、くぅにあげたら、くぅも食べなかった。普段はパクパクなのに。

 12歳になって日光に移動教室に行ったの。1泊2日で。
「くぅの面倒しっかり見てよ!」
「分かってるわよ、もう十回以上言ってるじゃない。学校に遅れるわよ!」
 後ろ髪引かれる思いで、学校の前に止まってる大型バスで日光に行ったの。バスの中は女子でアニソン歌いまくり! お菓子も五百円以内って約束だけれど、皆で考えてダブらないように買ったから、すっごく充実! 夜もお喋りに夢中になって先生の見回りに気付かなくて怒られたけれど、普段より2時間も遅くまで起きてて、これがリア充っていうのかな(笑)

「ただ今ー!」真っ先にくぅに会いに行ったの。でもたった1日で、すっごく痩せててわずかしか動かないの。普段なら、甘えて「くぅー くぅー」って話しかけてくれるのに。
「ママー! ママー! くぅが動かないよ・・・・面倒見てくれたの?」
 ママはキッチンから手を拭きながら走ってきた。
「ちゃんと見てたわよ、見ていたのに何も食べなくて、パパもママも困っていたのよ」
「くぅー死んじゃやだよー!」泣きながらいっぱいハグしたの。
 この日はベッドで一緒に寝たの。早智子は寝相が心配だったけれど、大丈夫だった。翌日目が覚めてみると、くぅが元気に早智子の唇をなめ回していた。
「ちょっとー、くぅ、くすぐったいよー」くぅを両手で包み込んで真っ正面から見つめた。「もう絶対離さない! 死ぬまで一緒!」 くぅも嬉しそうに細い尻尾をフリフリしてたっけ。 ・・・(続く)