舞台脚本家の寺山修司の作品。「ポケットに名言を」と言う本がある。もうずいぶん古い作品だけれど、版を重ね、表紙をリニューアルしてあり、古さを感じない。この人が選んだ古今東西の名言が選んである。
今回はあえてその作品には触れず、(先日「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ノルウェーの森」と読み続けたことを書いた。最初の3つが所謂『青春三部作』なのだが、折角そこまで読んだんだからもう一度「ダンス・ダンス・ダンス」を読み返してみようかと思ったんだ)、以前「1Q84」から心の琴線に触れたフレーズを幾つか紹介した。今回は「ダンス・ダンス・ダンス(上)」から。
・「傷つくとどうなるのかしら?」....「そういうのって慢性化するってことなんだ。日常に飲み込まれて、どれが傷なのかわからなくなっちゃうんだ。でもそれはそこにある。傷というのはそういうもんなんだ。」
・「本当にいいものはとても少ない。何でもそうだよ。本でも映画でもコンサートでも....でも昔はそんなこと真剣に考えなかった。何を聞いてもけっこう楽しかった。若かったし、時間はいくらでもあったし、それに恋をしていた。詰まらないものにも、些細なことにも心の震えのようなものを託することができた。」
・「....でも本当はそんなの全然聞いていないんだ....彼女はただ寂しくて誰かに抱かれたかっただけなんだよ....寂しいというのは彼女にとっては誰かに解消してもらう感情なんだ。誰かが解消してやればそれでいいんだ。それでおしまい。そこからどこにもいかない。でも僕はそうじゃない。」
村上春樹にでてくる僕は「いま」っぽくないし、はっきりしないし。でも僕の考えにはすごく共感できる。もうずっとず〜っと春樹の小説を読み続けているのは、すごくフィーリングがあうからなんだと思う。多くの読者(特に女の子)は、どう感じながら読んでいるのだろう? 共感できているのかな? 春樹を読んだ後、例えば深夜に一人で車走らせていると、村上春樹的に周囲の物を観察し、批評している。そして物語の「僕」のように、思ったことの一部が口をついてしまったりする。やれやれ。
次回寺山修司「ポケットに名言を」を紹介する。
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