*「阿片戦争」(陳舜臣著)

阿片戦争 (下) 天涯編 (講談社文庫)

阿片戦争 (下) 天涯編 (講談社文庫)

 上中下巻全3000頁以上の大作を読み切る。よく知らなかった中国史の一端を知る。アジアで植民地にならなかった幸運を得られたのは、我が日本とシャムだけ。それはなぜ・・・? 色々な後解釈はできる。歴史小説を読めば、当時の志士たちの大志に触れることもできる。
 ではなぜに「眠れる獅子:清」はかくもこう弱かったのか・・・? 奸佞な軍機卿が出てくる。独裁的な皇帝もいる。独裁国家はやはりだめになる傾向なのか・・・? 否、軍国主義に走った帝国日本も似たようなもんだろう。
 日本と違い、民族問題があろうか。清は満州族による征服国家である。少数の満州族が大多数の漢族を制圧していた。それゆえ、清は対英で1つになっていなかった。そういう描写が非常に多い。そしてまた、足の引っ張り合いはするわ、兵力の小出しをするわ、敗れるべくして敗れたという印象だ。 大作にふさわしく登場人物が多い。林則徐など主要な実在の人物を押しのけて、フィクションで連維材なる豪商を主人公に置いている。(読後にあとがきで知る) 日本の作品だと、誰と誰が実在して、誰がフィクションか分かりやすいのだが、(特に聞き慣れない中国語名だから)この作品はわかりにくい。
 この屈辱的な敗戦により、中国は大きな時代変遷をとげる。とは、いうものの復活を遂げるまでに140年以上かかったことになる。大きな代償だ。そして今日、「中華思想」が再び頭をもたげてきている。歴史は、どのように繰り返すのだろうか・・・