*向田邦子『思い出トランプ』

 向田邦子はいい、と太田光がその昔ラジオで言っていた。太田氏の発言やテンションはいかがなものか? とも思うが、氏の読書量には文句は無い。女流作家(近年この言葉は死語のような気がする)が苦手で食わず嫌いなのだが、そろそろ向田邦子を読んでみようかと言う気になった。
 まだ登場人物に戦争体験者が出てくる、所謂「昭和色濃い」短編集だ。登場人物も和服だったり、会社の上司が従業員に手を出すとか、姑の口がホントに悪い(昔の人って確かに意地が悪い)など、今の世界では信じられない世界だ。これこそ「渡る世間に鬼はない」で名を馳せた向田邦子なのだ。確かに文は巧い。またゴタゴタしている家族を描かせたらピカイチなのだ。読めば読むほど「昭和は遠くなりにけり」を痛感する。
 
 夏は涼しい部屋で読書にふけるのは最高だ。以前、村上春樹を再読したくなって、嬬恋高原のホテルで読書にふけったが「贅沢だなぁ」と感じた。普段は根っからの貧乏性で動き回っているからそう感じるのかも知れない。今夏は夏読み切る「課題図書」が見つからない。お薦めは、何か無いかい・・・?