*原発事故を予言?『東京に原発を!』(広瀬隆著)

1986年チェルノブイリ事故に出された本著、「安全、安全っていうならいっそ東京に作ればいいじゃないか!」と逆説的な意見を述べている・・・・のはほんの少しだけ。内容の大部分はタイトルほど過激じゃなくて、原発の危険さや、原発安全神話を支える委員会や委員長の嘘や背景をすっぱ抜いている。
特に使用済み燃料の再処理や保存は「絶対に無理!」というのが、すでに1986年当時で分かっていた。その当時には、近年毎年数百億の税金をムダ食いしている福井の「高速増殖炉もんじゅ」がまだできあがっていない。米英仏の3国で不可能とあきらめた事業に日本政府は取り組み、そして(予定通り)失敗。この建設費用と維持費の1千億を超える金額は、いったい誰の懐に入っていったのだろう。どこの政治家に入り、その政治家を支援する土建屋に入ったのだろう・・・・?
万が一事故の際の報告書の文は、現代の東電補償に相通じる物がある。こんなくだりだ。「国家にとって重要なものは死体の実数ではなかった。放射線被曝によって死亡したという“因果関係を証明できる死体の数”だけが、補償金の対象となる。したがってどれだけ癌患者が増えても、さしたる問題ではない。因果関係など、証明できるはずがないからである」(本文P308)
 神話が崩れた今こそ再読するのも良いかも知れない。解説が野坂昭如なのも時代を感じるね〜。

東京に原発を! (集英社文庫)

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ドキュメント東京電力 福島原発誕生の内幕 (文春文庫)

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