*『ロシアについて』(司馬遼太郎著)

司馬遼太郎

ロシアについて―北方の原形 (文春文庫)

ロシアについて―北方の原形 (文春文庫)

1989年、ソ連崩壊前の作品。20年以上も古いが、古さを感じさせないところ、否、寧ろ読んで学ぶことが多いと思うのが、さすがの国民的作家なのである。特に、名作『坂の上の雲』と『菜の花の沖』の2作でロシアと長年関わってきた氏の随筆である。しかも第二次世界大戦で戦車部隊として満州ソ連軍と対峙していたのである。
なかなかロシア人という民族がよく分からない。多種多様な民族の混血も進んでいるだろうし。コザックという種族も一体になんなのか。そして歴史検定によく出てくる工藤平助 『赤蝦夷風説考』の、何がそんなに大事なのか?どこが優れているのか?そういう事にずばっと答えてくれる。分かりやすいのだ。強調したいことを繰り返し述べる、という彼の癖も随所に見られる(笑)
思わず、モンゴルの話も出てくる(どういう関連性があるのかは読んでから)。どうしてあの強大な騎馬民族が崩れ去ったのか? 分かりやすい。池上彰なら褒めてくれるだろう(笑) 満州族が支配した清王朝がどのように外蒙古を骨抜きにしていったのか等興味深い。
「大学生が読むべき本」というコーナーをよく見かけるが、司馬遼太郎の何冊かは読んでいるだろうか? 確かにスティーブ・ジョブズも大事に思えるが、日本人として読んでおくべき作家だとは思うが。
特に現在、日韓・日中と領土問題で過去10年の中では一番ぎくしゃくしている。ネトウヨが騒ぎ出しているが、おそらく昭和前期もこんな状況だったのだろうと推測できる。すべての責任が軍部や財閥、マスコミやましてや天皇にあったわけでもないだろう。氏が生きていればこの状況を何と語ることだろうか。