*「幸せのための経済学」蓼沼宏一著

岩波ジュニア新書「知の航海」シリーズサブタイトルに「効率と衡平の考え方」とある。このシリーズは「中学生にも理解できる水準とやさしい表現で」「若い読者の学術の関心をよびおこす」ものだそうだ。
 なるほど序盤は易しい。池上彰なみ、とは言わぬまでも、例えば「衡平」と「公平」の違いだとか、「功利主義」の「功利」とは、と解説してくれるのだが、後半になると、だから「経済学は・・・」と敬遠されるように思う。何しろ、数学的な考え方ができないと、現代の経済学は手に負えない。
先ほどセンター試験で「小林秀雄」が載ったところ、平均点がグンと落ちたといニュースであったが、なかなか昔のような気骨のある中高生は減った。語弊があるなら、上位陣は昔と変わらず(漢詩が書けぬ代わりに、その分の知識やICTが身についている)或いは凌駕していると思うが、それ以外がイケナイ。とても公立中高生が手にとってみたくなる代物では無い。
 これは勉強できる人が、「普通これくらい書けば誰でも分かるだろう」と思って書いたものだ。この手に似ているのが、一部の高校大学の詰まらぬ講義だったり、その手の教授が書いている大学で教える教科書だったりする。
 まぁそうは言っても、この本は「経済学」が世の中にどう役立つかのヒントを与えてくれる。チリでの鉱山事故や東日本大震災のような事故の際に、どう行動することで限りある資源を分配するのがベストなのかを科学的に説明している。
 世の半分は大学進学する時代だ。なら世の半分は読み切り、楽しめると思う。