*伊勢正三「WORKS」

伊勢正三「WORKS」

WORKS

WORKS

 声が出なくなった氏のCDを買い控えていた。なごみ−ず、のコンサートには行ったこともあるのだけれど。あの甘ったるいような歌い方は往時を知っているファンには切ない・・・時はどうして人を変えてしまうのだろう・・・? その残酷ささえ切ない。 WORKSとは不思議なアルバムだ。ダレが選んだか知らないが(もちろん本人だろうが)、(なぜにこの曲が・・・?)というようなのが入っている。具体的には、シャワールーム、とか、バルコニーの休日、MUSICIAN、青い10号線、Sea Side Storyなんかだろうか。一体コアなファン以外に誰が知っているというのか?
 しかしこのアルバムで初めて知った「夜にまぎれて」(これ「Heart Beat」に本当に入っています???)などは、正やんのテイストを残しながら、大人の恋を描いた名作である。この曲に(ファンとして)出会えたことに感謝したい。 1987.09.25リリースの「OUT of TOWN 」はメジャーレーベルでなくて、(このまま消えてしまうんじゃ無いか?)と本気で心配(尤も本人は多額の印税を得ているだろうからそんなこと心配する方がバカだが)したもんだ。それでも中野サンプラザでコンサートをしてくれたけど(そのときはやっぱり意味も無く30分以上遅れて始まったけれど)。その中の1曲(「けんかのあと」)が入っているのがレーベルを越えて作り上げたアルバムの証明で、それは震えるほど評価したい。
 そしてなぜに今の歌唱力で歌った?「ささやかなこの人生」とか「22歳の別れ」。これはもう皆の知っている名曲では無い。違う何かだ! そう思うとそれはそれでまた違うボーナストラックに思えてくるから不思議だ(笑)
 やりきれない夜に、ちょっと濃いめのアルコールに酔う。そのときジュークボックスから「ほおづえをつく女」が流れてくる・・・そんなシチュエーションも良いのじゃないか。(もちろん甲斐よしひろがライブで言っていたが、場末のバーで労務者風のおさんがジュークボックスに小銭入れて流れてきたのが「裏切りの街角」(甲斐バンド)というのも相当渋いのだけれど)。ビリヤードの弾く音が響くバーで小銭をチャラチャラさせながら、懐かしい曲に一時酔いしれる・・・そんな人生を只一度で良いから過ごしたかったな。そのときに見ず知らずでも良いからそばいてくれる人がいるような人生を過ごすことができるなら、今までの人生全てを捨てて、やり直す勇気が持てるだろうに・・・