*A面とB面 3枚のアルバムから

先日大瀧詠一追悼で「A面で恋をして」のコメントを残した。今のCDエイジにA面もB面も分からない。「レコードに溝は何本あるでしょう?」のクイズにも答えられないエイジが増えた。
 「あの頃は良かった」と言うと「年寄りの証拠」と言われるのがオチだが、LPの時代、オープニングとエンディングはもちろん、(A面の)オープニング、(B面の)エンディングも気になる存在だった。そう、確かにレコードをひっくり返すその瞬間にも、リスナーには期待を、製作サイドにはその期待を裏切らない覚悟を、当時は持っていたと思う。
1番目のアルバムは、風の4枚目『海風』

海風

海風

このアルバムのエンディングは「防波堤」(作詞・作曲 大久保一久)。正やんメインの風が、ついに大久保一久に門戸を開いた瞬間である。オリコン週間LPチャート第1位は当然か。
2番目のアルバムは杉山清貴&オメガトライブの3枚目『Never Ending Summer 』。
NEVER ENDING SUMMER

NEVER ENDING SUMMER

A面がシングルカットされた「RIVERSIDE HOTEL」が入り、B面は「Never Ending Summer I〜 IV 〜 Prolog」という連作集で、(夏に出会った男女が一度は別れ、再び会おうとするまで)を今をときめく秋元康大先生が描いている。オリコン22位という売れ行きだったが、夏のシーサイドラインを好きな人なら気にいる一作である。
 3番目に伊藤銀次の『SUGAR BOY BLUES』
SUGAR BOY BLUES

SUGAR BOY BLUES

こりゃあまたマイナーな選択だが、何度聴いても飽きが来ないアルバムだ。このジャケットの可愛いアルバムは、元春や大滝詠一のポップなテイストを含む反面、銀次の真骨頂はバラードだといわんばかりの名曲2曲「真冬のコパトーン 」「Hang On To Your Dream 」収録。残念ながら最新CDでは単純に6番目11番目の曲。さらにボーナストラックが3曲入っているので、アルバム本来の曲順の意味をなさない。(〜ダッシュボードの影からコパトーン 忘れてたはずの夏の記憶 よみがえる 海岸道路 風の中見えない君がたたずむ〜「真冬のコパトーン 」)夏の恋の記憶を、真冬にひょこっと出てきたコパトーンで呼び覚まし、心が痛むシーンは、叙情派と言っても良いのでは無いか・・・?
 CDの時代になって、この4回の喜びが無くなったこと。今まで4回気合いを入れて作った曲が少なくなったと思う人は自分だけじゃ無いはず。その思いを(例えば)この3つアルバムに託して語ってみた。あのレコードをひっくり返したり、静電気でつく埃をとる面倒な作業からは解放されたのだけれど。高めの喫茶店でLPをわざわざかけているようなお店のオーナーを、羨ましく思ったりする。