*今改めて高杉晋作「世に棲む日々」

 吉田松陰を好きだというと、ちょっと歴史通っぽくてカッケー。幕末、大抵若者なら土方歳三沖田総司、読書家なら龍馬や高杉が好きだという人が多い。爆笑問題太田は後者で、1に龍馬、2に高杉。彼のイメージだとハチャメチャな高杉だと思うのだが。
 山岡荘八の「高杉晋作」を読んでいたが、そこは国民作家:司馬遼太郎も読んでおくべきだろうと「世に棲む日々」全4巻を読み切った。司馬遼太郎は読みやすいのだが、彼の司馬節とでもいうべきか、例えばリフレインの多用など、司馬好きな自分でも多少辟易するので、苦手な人には(またかよ)と思うかも知れない。しかし、精密だ。山岡荘八と甲乙つけるべきもないが、吉田松陰刑死から遺体を引き受けるところなどはずいぶんと違う。死に方も違う。辞世の句「面白き こともなき世を 面白く」は当然両者とも詠んでいるのだが、詠んでいる状況はずいぶん違う。
 この本は吉田松陰から始まり、高杉晋作の死で終わるのだが、両者の周囲のに人間関係やその後も語っていて、相変わらずよく調査して書いているなという印象だ。印象と言えば、山県有朋については幾度も色んな本で軽蔑しているが、今回が長州モノであるため、それがいよいよ濃い。木戸孝允も良く書いている本を見ないのだが、今回は名前は何回か出てくるのだが人物として登場せず、当然一言も発していない。明治の3傑なのに。本当にそれで良いのか? 
 高杉晋作という人物のすごさと偉さがこれほど分かる本も無い。高校生の夏休みの課題図書に、なぜにこういう本を薦めないのか? 新成人の諸君、もう読んでいるか? 未だなら読もう! 教養は自分の財産だ。