*『闇に問いかける男』(トマス・H・クック)

 この人の作品に凝っていて読んでいる。相変わらず外国人の名前について行けず(例:「見てみろジャック!」 ピアースが近寄ってみると・・・ ジャックとピアースは別人かと思えば、1stネームとラストネーム・・・統一してくれない? 日本人だと、どっちが1stネームなのかわかりにくい!)、苦戦する。
 本作は残り24時間以内に新たな証拠が出てこなければ容疑者を釈放するために刑事が奔走するタイムリミットサスペンス、初の試み。朝6時がリミットなので、真夜中2時や4時に証言聞き出そうとするなど(無理がない?)と、微妙にのめり込めない。
 この作家の場合、関係者が必ず心のどこかに「暗い澱」のようなものを抱えていて、物語に深みを増させるよう作ってある。今回は主人公の刑事の一人は娘を変質者に殺されたが、容疑者は証拠不十分で釈放、その後事故死。今回の少女殺害事件に執念を燃やすと同時に、被害者の母親に微かに愛情を持ち始めている。
 普通警察本部長などは事件に全く関係しないのが普通だが、今回彼の息子は麻薬患者となって今は死の淵。終盤、少女のいたマンション入り口で麻薬買う金ほしさで一悶着してたことが判明。金ほしさに少女の無くなった銀のロケットを奪ったのか?
 そもそも容疑者の若い男はかつて自殺願望のあった男。彼が住む水道管に少女の絵が描いてあったことから捜査上に浮かんだ男。刑事たちは、容疑者に違いないと、暴力を使ってでも自供に追い込みたいが・・・
 トマス・H・クックの作品は最後に、アッというシーンが用意してある。さて今回は・・・もちろんある。楽しんで欲しい。 

闇に問いかける男 (文春文庫)

闇に問いかける男 (文春文庫)