*「凍りのくじら」(辻村深月著)

この人の作品を1年に1回くらい読む(「ツナグ」は本当に泣けたぞ)。主人公理帆子が女子高生ながら魅力ある人物に描かれている。今中盤だ。序盤は、(女子って、こういうことを考え、こうやって他人にあわせているのか。大変なんだな)なんて思わせる。
中盤に入ってこう思う。これって大人になって優秀な頭脳を持つ辻村女史だからこその思考であって、いくら何でもこの思考は無いのではないか。そもそも有名進学校に通いながら、週に何度かお酒を友達らと飲んでいて学校の勉強についていけるのか? 父が失踪、母が不治の病で入院中。いくら父の友人による経済支援があったとしても無理が無いか? 生活感がまるで無い。まぁそういう小説なんだよ、と言われればそれまでなのだが。
 通勤中に細切れに読んでいくと、序盤・中盤、そして読後の感想が変化していく事が多い。読後に感想を書くと中盤まで抱えていた想いがとんでしまうことがある。それがいやで途中ではあるが書いてみた。ドラえもんはそれほど詳しくないが、この小説は面白い。職場の同僚が『冷たい校舎の時は止まる』を読んでいるのを見かけた。旬の作家の1人なんだろう。
 そして読み終わる。1「その時だった」と、metooも小説書く時使いたくなるフレーズが多いなと感じ、2まだ小学生の郁也に「結構難しい言葉を使って話しかけている」けど、(そりゃあちょっと難解じゃないかい?)と気になる点もあるが、写真集のシーンでは涙が出るような親子愛を感じて、辻村深月らしい仕上がりになっている。せめてもう少し良いタイトルだったらなぁと思う。
 追伸:ラストシーンを込んでるファミレスで読み終える。感動を覚え、コーヒーすすりながら周囲を見渡す。ついつい人間観察して色んな事を思う。今なら結構文学的に書けるんじゃないか、なんてね。そうして頭の中を数行埋めてみる。しかし(ストーリーの)着地点が見当たらない。これじゃあ芸能人による週一回のエッセイだよな・・・

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)