*『民王』(池井戸潤著)


 伊坂幸太郎ばっかり読んでいて、たまには硬派な熱量の多い作品も読もうか、冬休みだもんと思い本書を手に取った。もう古い本だ。読み始めてビックリ、池井戸潤にしては珍しいコメディだった。失敗。
 魂の入れ替わり、っていう転校生の男女が入れ替わる往年のパターン。これが辛くて当初読むのを何度も断念しようか悩んだ。それがサイバーテロの一種だったと判明してくるあたりから風向きが変わって、総理としての信念だとか、医療緩和だとかになってようやく、「池井戸節」が出るようになって、熱量のある物語になっていった。
 荒唐無稽な話なんだけれど、踏襲や未曾有が読めなかった麻生太郎を彷彿とさせるなど、かつての時代を知っているものにはニヤリ、とさせる作品でもあった。だけれど、池井戸には熱量の多い物語を作っていってほしいと思うんだ。絶対。