- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/05/20
- メディア: 文庫
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読んで感じるのは「あぁ、この人は、人の親になったことがないんだな」ってことだ。物語は、左目を失った少女が移植した目には、前の持ち主の記憶が残っており、その記憶の中には女子中学生失踪事件の女の子が監禁されていたものがあった、という話が基本だ。ここまでだと「世にも奇妙な物語」等で語り尽くされた題材である。あのTVだってけっこうおどろおどろしいものがあるが、この作品はもっとぐろい。
話がそれた。その少女は左目を失ったときに記憶も失い、今までの才能に溢れ、学校の人気者が、一転不器用で何もできない子になってしまう。そのことに母親は落胆しよそよそしくなる。父親は距離を置いた他人行儀に語りかける・・・・
ここがものすごく違和感。実際人の親になればそうはならないだろう。たとえば、障害を持った子どもの将来を悲観して心中する親がいないでもないが、障害を抱えながらも健気に精一杯人生をエンジョイしている家庭の方が断然多い。まして記憶喪失ならいつかは戻るかもしれない(本作でも記憶は最後に徐々に戻ってくる)。おそらく作者はまだ「愛情」が理解できていないのだろう。
よく「結婚してもしなくてもどっちも不満は多い」みたいな格言があるものだが、「一度してみないと分からないよ」。まさにその通りだと思う。アメリカにも多くのホラー作家がいるが、結婚や子育てを経験してからのホラーの方が、バウムクーヘンの年輪のように重みを増してくるだろう。
あと1作くらい読んでみようか、とも思う。ただ、実際のところ映画も読書も(特に読書は)、自分の人生に+になるもの(たまにはスカッとするだけでもいいのだが)、ためになるものを選びたいな。
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/03/25
- メディア: 単行本
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