*「SOSの猿」伊坂幸太郎著

SOSの猿

SOSの猿

 出だしが読ませる。すごく個性的なキャラクターが出てきて、これはいったいどこに落ち着くんだろう?とワクワクさせる。
 いくつかのピースが提示されて、それが結末に向けて収斂されていくのは最近の小説や映画の手法だ。そういう手法だと言うことは読んでいて想像できる。
 「西遊記」と「ユングの心理分析」、そしていくつかのキーワード(たとえば)「(実際にあった)株の誤発注事件」や「もう二度と会えない人が今どうしているか想像して物語を作ることが、人を幸せにする」などを主な材料にして、「今日はこういう料理を作ろう!」という意欲は感じる。ただし、それが鼻につき次第に辟易してくる。
 それはもう「ジャガイモ人参玉葱」を用意して、「さぁ今晩のおかずは何でしょう?」みたいな感じだ。もうその時点で前半のwakuwakuが消えている。そりゃあカレーも肉じゃがも嫌いじゃ無いよ。でも、『オーデュポンの祈り』のようなワクワク感が欲しいよ。最後は早く終われと念じながら読み終えた。いちおう、全てのピースはきっかり埋まったのだけれど。
SARU 上 (IKKI COMIX)

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SARU 下 (IKKI COMIX)

SARU 下 (IKKI COMIX)