*「人生はビギナーズ」

このストーリー、この雰囲気、wowowのW座の典型のような作品。監督の実体験がベースというけれど、なるほどちょっとやそこらでは、「75歳の親父が『俺はゲイだ!』と突然息子にカミングアウトする」なんて思いつかないだろう。
その後若い彼氏が家にやってきて・・・・とか、息子が混乱して・・・・のようなコメディにはならない。結婚当初からゲイだったパパ、奥さんの努力にもかかわらず、パパの性行は変わらず、普通の愛に満ちた家庭であるわけもなく、そのことを微妙に感じ取る息子。やがてママが病気で死に、75でカミングアウトしたパパも80前に癌でこの世を去る・・・・愛情をうまくキャッチボールできず、喪失感ばかり残る36歳にイアン・マグレガー。
 彼女ができるものの、彼女もまた愛情に飢えつつも愛を恐れ、逃避してしまう傾向のある壊れやすいハートの持ち主。物語は若い二人の恋と、パパが生きていた頃のゲイ仲間との交流や、ママが生きていた頃の家庭の様子とを上手い具合に絡めながら進んでいき、「癌患者」とか「ゲイの老人」と言った、ともすると暗くなりがちな話をそうさせないで、だけれど先の読めない展開にしていく。
 きっと十分恋をしていない若い人には詰まらない物語。この主人公の、そして恋人の気持ちや展開が読めるようになると、絶対面白い映画だと思う。だけれどこのおもしろさが分からぬ恋をしている若者たちが羨ましくも思う。
 この映画を観ながら、パパ役のクリストファー・プラマー、これだとアカデミー賞だろう! って調べるとやはり・・・・! そしてここに出てくる英語の分かる犬の演技がピカイチ! すごく良い味出している。きっとアカデミー犬賞とっているんだろう、間違いない!