*「夢違」(恩田陸著)

夢違

夢違

よくあるじゃない「夏休み課題図書」。そりゃあ読んで意義が見いだせなくもないのだけれど、読んでて楽しいものがいいなぁ。「夢がTVで見られたらいいなぁ」「それが予知夢ならもっとよくない?」・・・しかし現実にそういう者が出てくれば「売名行為!」となじる者、「化け物!」とデリカシーの無い奴、(事故後に)「なぜに我が子を救ってくださらんかった?」みたいなウザイのがワンサカ沸いてくることも想像に難くない。これはそういうお話。 誰もが一度は物語を想像しておきながら、小説にできなかった。こういうのを時間がある夏休みに、先を先を楽しみにしながらページめくるのが、本来の読書のようだと思うんだ。
 冒頭死んだはずの結衣子を見かけるシーン。あるいは小学校の1クラスだけ昼休みに(何か)に追われて校庭に逃げ出すシーン。その理由は・・・? 主人公の浩章には小学校に既視感あり・・・など序盤は読者をグイグイ物語に引き込む。小学校を実際に訪れる際の情景描写(G県H市は岐阜県近江八幡市か?)も良い。
 H市の民宿の廊下に差してあった水仙に花の香りで気づくシーンはうまいと思う。翌日には猫柳に変わっていて「昨日は水仙が差してありましたよね?」「え、昨日から猫柳だよ」 宿の方に聞いてみれば数日前までは確かに水仙だったが・・・、そういう細かいところに(謎)が用意してあって、これは映画化しても面白い。特にVFX頼りのハリウッドあたりで作ってみたら面白そうだ。いや待てよ、この作品は「苗字」が多少ミステリーに絡んでいるのでそれは難しいか? などと考えてみる。
 死んだはずの結衣子があちこちの監視カメラで目撃され、さらには小学校での集団失踪など物語が膨らみすぎ!で一体どうオチをつけるのかが興味津々だったが、ラストは読者に想像をお任せします、って感じなのが、良いのか悪いのか・・・ちなみに後で知ったことだが日テレ系の「悪夢ちゃん」はこの作品が原案だったそうな。
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