*愛車を売る時

慣れ親しんだ愛車を売った。愛車を替える時はいつも寂しい。

750ライダー」というマンガが確かチャンピオンで連載していた。最初はちょいワルの少年の話が、なぜか青春和気藹々ドラマになっていた。知らない人の方が多いと思うがサンデーにスピンオフしたような作品が不定期に連載され、こっちは渋かった。
 ある回で、母一人・子一人の家庭でティーンの主人公が750乗り。バイクの腕を競いあうライバルもいるが、困窮した家庭を顧み、意を決して単車を降り売ることにする。そのことを告げ朝、家を出るが、ライバルに挑発され、海辺のワインディングをラストランする。
 そこで確かこんなセリフ、「ここでブレーキ(クラッチだったか?)をかけさえしなければ・・・」次の瞬間、ワインディングの向こう遙か彼方に、道路路肩の除草作業をする母の姿が目に入る。無意識に握るブレーキ。バランスを崩した750はガードレールを越え、崖下に・・・除草作業の女性達「バイクは怖いわね」「うちの子はバイク降りるから安心。今日はすき焼きなのよ」
 ずいぶんチャンピオンと違ったティストだった。

 唐突に中島みゆきの古い歌を思い出す。(『ギターはやめたんだ 食っていけないもんな』と それきり火を見ている)(「おまえの家」より)
 
 すでに違うバイクの新車に乗っている。それはそれで楽しいのだが、排気量も小さくなり淋しさはひとしおだ。バイクを乗せたトラックを視界から消えるまで眺めた日。空はもう今にも泣き出しそうな雨雲を抱えている。