*黄昏時は・・・「分かれ道」

分かれ道


 この時期闇が早い。「黄昏時は逢魔が時」。些細な時にこそ逢魔が忍び寄る。ふとした瞬間に。何気ない瞬間に。例えば若いお父さんが幼児の手を引く。パパに甘える子どもの声に、もう返らぬ己の人生が押し寄せる。
 あの時選択しなかった人生。もう戻っては来ない恋人と、生まれることの無かった我が子。そして現実にそこにいる生まれてきた人生。
 人はなぜ選択できなかった過去を振り返り、夢見て、やり直すことを切望するのだろう。詮無き思考を何度行い、頭から払いのけたろう。しかしそれでも現れては心を悩ます。こんな黄昏時に。