*そして『グラスホッパー』(伊坂幸太郎著)

 面白いね、特に前半が。誰にも気付かれずに信号待ちのターゲットを押してひき殺させる「押し屋」。本当にいそうだ。顔を合わせただけで、死の淵が見えて、自殺願望が出る「鯨」など、キャラが立っている登場人物。
 一方主人公は彼の作品によくでるいつもの気の弱いタイプ。今回は「鈴木君」。きっとピンチにあっても、度重なる偶然に命拾いをするのだろう。それも読む前から見え見えなのが惜しい。そして後半の駆け足的な終わり方は何なのか。前半が丁寧に描いているだけに(実際、次に読むのが待ち遠しいとか、1本電車を遅らせて座って読んでいこうと思ったりした)、後半はやけにあっさりしていると思う。ラストに「亡き妻」と「健太郎・孝次郎」兄弟が彩りをいれてはいるけどね。