*『代償』(伊岡瞬著)

久々に睡眠時間を削ってまで読みたい!と思わせる作品に出会った。悪人の方は、登場する小5の場面から根っからの悪人である。出会ったことの無い平和ボケの大人には、(そんな、たかが子どもが。大袈裟な)と木で鼻をくくる態度をするだろう、きっと。一方の主人公(両親を焼き殺され、保険金・自宅の土地・財産を奪われ、奴隷のような生活を余儀なくされたトラウマを持つ少年)のように、何でもマイナス思考にしか考えられなくなる人というのも、実際にいるものだ。
 そんな両者が小学校や中学校で出会ってしまうことがある。そんなときに被害を訴えても動かない親も多い。自殺してから騒ぎ出す親もいるが、遅いっちゅーの。metooならその世界から逃れるために、勉強して絶対に自分の過去を知らない高校に受かろうとするけども。(でも本当にそれさえもできない、去勢されたような子どもがいるもんだ)
 きっとそういう輩は、いつかはどうせ犯罪者になるんだ。けれど、この物語の悪人は法の網をくぐり抜ける。(こいつと同じ空気は二度と吸わない。交わることは無い!)と誓いながらも、弁護士となった主人公は、やっぱり同級生だった悪人の弁護を引き受けてしまう。そしてやはり悪人の張った蜘蛛の巣にはまってしまう。
 「代償」とは何だろう? ホントにこの正義の二人に勝機は訪れるのか? どうみても残り少ない頁。解説の頁を考えると、(どうラストにどんでん返しをもってくるのか?) と心配したくなる。実際はどうなのかは、どうか一読して欲しい。面白い。特に私のような、復讐好きには。

代償 (角川文庫)

代償 (角川文庫)