*映画館で観てみたい『日の名残り』(1993作品)

アンソニー・ホプキンスを見るとどうしてもハンニバル・レクターに見えてしまうmetooです(笑)
 その彼がラブストーリー映画に出ているというので気になっていた。カズオ・イシグロブッカー賞受賞したのも知っていて、気長に無料放送で出会えるのを待っていた。その間、名作『私を離さないで』があって、ノ−ベル文学賞があった。マイナ−指向のmetooには、「ノ−ベル文学賞」があったから見たんでしょ!?みたいなのはいい迷惑で、誰にも知られてないけど知ってたよ〜! みたいなな感じが良いのだ。
 アンソニー・ホプキンスがストイックな執事を延々演じきるのだが、少しくらい人間味を出して(お前のことが好っきやねん)と浪花節だよ、人生は。ってなってくれればと願ったよ。イギリス、あ−面倒くせ−。
 第二次世界大戦前夜の、複雑な国際情勢が、ある貴族の豪邸で行われていた、なんてことが到底日本の1国民には分からないのです。これが事実だとすると、カズオ・イシグロが海を渡った、ということが本当に意義のあることだと思うのですよ。生粋の英国人にこの小説が書けなかったわけですから。それと嬉しかったのがクリストファー・リーヴに久々出会えたことですかね。As you know,彼はス−パ−マンで一躍時の人となったのですが、落馬事故で首から下の下半身不随。そして突然死・・・意外なところで意外な人と出会えるのも旧作の良いとこでしょうか。
 どうしてあの時「好きだ。一緒にいて欲しい」と言えなかったのだろう。そういう後悔の一作だ。(但し、アンソニー・ホプキンスがどうみても50過ぎに見える。再会は20年後・・・という設定だが・・・それだと70歳になっちゃってるぞ)。もしかしたら女性が亭主と上手くいってないせいもあり、今度こそ火がつくかも・・・と思わせながら、会う直前に孫が生まれたことで、女性がとどまるってストイックな設定も(原作が上手いな)と唸らせるのだ。
 生まれながら帝王学を学ぶ者がいる一方で、生まれながら執事の者もいるのだろう。そういう人って結婚しなくても後悔しないのだろうか。「忠誠」が人生で満足なんだろうか。その辺を英国人で無く、(微妙に京都には元貴族がお住まいになられているだろうが)貴族制の無い日本人が描けたことがカズオ・イシグロの凄さ、ノ−ベル文学賞に相応しい理由なんだろう。「午前十時の映画館」に相応しい一本ではないだろうか。
 ちなみに、主演男優賞、主演女優賞、美術賞、衣装デザイン賞、監督賞、作曲賞、作品賞、脚本賞の8部門にアカデミー賞ノミネート作品である。良作である。特に背後の歴史を知っていれば。
日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)