*『空母信濃の生涯』(豊田穣)

 「夏だから読んでみい」と数冊の年季の入った単行本を無理矢理貸してくれた。その中の1冊。まぁ小さい頃「世界最大の戦艦大和・武蔵」に次ぐ3番艦として建造されたと紹介されながらも、(公試(呉に回航中)中に潜水艦の雷撃で沈んだ悲劇の)みたいな記述だけで、詳細不明だったのでまずはこれから読むことにした。
 何しろ大和と言えば(金ばかり喰って役に立たない)「昭和3大バカ査定」と後に揶揄されたもの。それが2番艦武蔵、3番艦信濃、さらには4番艦紀伊までも計画されていたというのだから、青函トンネル3本も4本も造っているようなもんだ。信濃に至っては実戦にでることなく1000人以上の搭乗員と共に海の藻屑になったんだから、当時の軍隊の責任は重いな。
 ここでも古参兵の陰鬱なイジメが出てくる。中には病的な奴も出てくるのだから、せめて常識のある士官クラスがそういうのをやめさせなきゃ。信濃沈没後救助に向かう駆逐艦も、全員は救いきれないから、救助を懇願する泳げなさそうな新兵は、見捨てたなんて記述があった。もしもミッドウェー海戦でヘマしてなかったら?なんて思う事もあるが、こういう国はやはり一度大負けした方がいいんだろう。今の日本のあり方が、正しいのか?と言われれば首を傾げたくもなるが、それでも軍国主義よりは良いのだろう。国民のための国であるはずが、往々にして国のために国民が犠牲になる、って話はいやというほどきくものね。
 それでも戦後何十年も経つと、ゾロリ愛国主義がでてくるものだ。「平和」っていいなぁ、「無事」が何より、と思えるのはいつも「平穏」が失われた時なんだよなぁ。

空母信濃の生涯 (集英社文庫)

空母信濃の生涯 (集英社文庫)