*『大人の流儀』(伊集院静著)

 これ読みたかったんだ。そう思っていたら、朝日新聞の「be」に先週・今週、そして来週に掲載。あまり今まで知らないでいたんですが。
 そもそも「大人」がよく分からない。小さな時イメージしていた姿と、自分が成った時のイメージの乖離がハンパない。骨太な氏のことだ。きっと分かりやすい答えを用意してくれて、自分としては溜飲を飲むのだろう。とにかく期待していた。
 そして納得は7割8割。野球なら完璧なレートだが。ケイタイとかゲームなどはガキのすることだとバッサリ・・・! 今CMで「冒険を忘れた大人達に・・・!」みたいなのやっているが、そんな冒険を忘れた大人なら、「携帯ゲームなど捨てて本気で冒険してこい!」そうでは無いか? 
 では残り2割どこが不満なのか・・・? たとえばこういうくだりだ。「銀座のツケを年末に悩む」とか「旅打ちしていて東京に帰る金がなくなった・・・」 スケールがデカイと言えばデカイ。だがそこらのフツーの人が銀座でツケできるか? 答えはニエットだ! じゃあ旅打ちはどうだ? そもそも普通の堅気の人がどうやったら旅打ちできるというのだ。だから「安手を引くな!」みたいなカッケー言葉を聞いても、多少引き算されて聞こえてくるのだ。
 だが面白い。読み進むに当たってこの人が夏目雅子の元夫だと改めて思い起こす。当時なぜにこのバツイチのオジサンがもてるのか分からなかった。今は篠ひろ子のダンナだ。世の中は不公平にできている。この本の最後の部分が妻・夏目雅子へのエッセーだ。おそらく死後初めて書いたエッセーだろう。その部分も泣かせる。本人は「途方に暮れる」と書いている『鬱』の時期をどう乗り越えたのだろう?(喧嘩と酒とギャンブルと本人は書いているが) 
そのハンパないスケールこそがもてる秘訣だったのかも知れないな。さすがに30万部を超えるベストセラーだ。未読の人には是非読んで欲しい。元妻への思いの部分は、アルコールが入っていれば泣けることだろう。

大人の流儀

大人の流儀