- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,芹澤恵
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/09
- メディア: 文庫
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背表紙のレビューでは「ほろ苦い初恋の回想と共にたどりついた事件の真相は、誰もが予想しえないものだった! ミステリーの枠を超えて迫る犯罪小説の傑作」。・・・まぁありがちな紹介文。そもそも彼の作品を「序破急」に例えるなら「序序序序序序序序序序序序破急」で、終盤に突然結末がやってくる(もちろん、あちらこちらに「ヒント」は隠されているのだが)。
例えば(P386/485)被害に遭った美少女が事件当日に、主人公ベンを探す電話をしていたこと。そのことを保安官に黙っていた少女は後にベンの奥さんになる。ベンが事件に関わっているのは間違いなさそうだが、犯人なのか?
例えば(P169/485)、容疑者とされた男が法廷で美少女の最後の言葉を言う「まさか、あなたが・・・」 主人公ベンもその時には応えることができなかった。だが言う。「しかし、今ならば応えることができる」
例えば(P259/485) 最後の瞬間を迎えたとき、息も絶え絶えになった彼女の囁き声が聞こえてきた−「まさか、あなたが・・・」−
この作品は是非「イケテナイ男子」「正直に愛している」と言えないブキッチョな男子に読んでもらいたい作品だ。日米の差こそあれ、愛の物悲しさを(これだけの悲劇として)捉えた作品は久しぶりだ。今風のラノベで書けば人気がでるかも知れない。ただいかんせんこの作品を少年少女が読むには退屈かも知れない。クックだからこそ、登場人物の背景(今回で言えばハイスクール以後に待っている皮肉な運命)が丹念に描き切れているので、それに付いてこられれるかで退屈度が決まる。その退屈を超えれば、アッと言わせるラストが待っている。ラストの仕上げもいい。大事なキーワードは2つだ。
「愛よ」そうこれは犯罪小説ではなく、愛の物語。
そして主人公ベンの父親の口癖「この少年は何かが欠けてるー」。
必ずしも順風満帆でない愛を経験した皆さん、是非読んで下さい!