*『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)

 先日(以前読んだことのある)『魔王』を読んだので、その50年後あたりを描いている(以前読んだことのある)『モダンタイムス(上・下)』を読んだ。読んだことあったかなぁ? この危惧は「浮気をしたら殺し屋雇って爪を剥ぐ」妻の佳代子さんが出てきてすぐに消えた。拷問をする前に「勇気はあるか?」と訊いてくる殺し屋さんも、あーいたいた、いたねー、懐かしい。
 前作『魔王』はヒトラームッソリーニのような独裁者が出てくるシステムを、『モダンタイムス』はネット社会での、国家ぐるみの陰謀と言う壮大なテーマが、伊坂ワールドのサラッとした雰囲気で描かれていく。爪を剥いだり指を切断したりの非道い拷問でも、ウイットの効いた会話が続くのでそれほど深刻にならない。
丁度『ゴールデンスランバー』の頃の作品。ゴールデンスランバーが、エンターテイメントなのに対し、モダンタイムスは社会派、である。伊坂幸太郎、渾身の一作である。

 

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

モダンタイムス(上) (講談社文庫)

 
モダンタイムス(下) (講談社文庫)

モダンタイムス(下) (講談社文庫)