*『ニュータウン クロニクル』(中澤日菜子著)

 東京の西の方に住んでいるmetooでなくても、この小説「東京4市にまたがる日本最大のニュータウン」とくれば、(多摩ニュータウンのことね)とピンとくるでしょう。今や高齢者ばかりのオールドタウンになっているので、興味をそそられて手に取ってみた。ちなみに中澤日菜子は知らない作家だ。
 一番最初に開かれた地域が小田急京王永山駅付近。まだ線路が無く、最寄り駅が小田急本線の鶴川駅京王線本線の聖蹟桜ヶ丘駅だったらしい。鶴川なんてバスで30分以上でしょ。昔は大変だったな。ちなみに作中に出てくる老人の多い駅、中山駅が永山駅か?
 クロニクル・・・と銘打っているだけあって、10年ごとに作品が書かれてあり、再登場する人物が何人もいるのも最近の短編集の傾向。登場人物の会話などは、(女性作家ってこういうこと書くよね、そこが男性作家と違うとこだね)って思う。
 大人になって廃校舎に忍び込むシーンがあるが、フィクションの極み。そこで彼らの自画像を発見するとかあるが、チョット待て。あなたたちが卒業してから後、何代も教室使っているでしょ。それに作品返却しないで廃校するって、どういう学校だよ? いくら何でも。
 ニュータウン誕生からバブルを経て高齢化、そして立て替えへとつながる再生の道。これらを実感している70歳~80歳代(くらいでしょうか?)の方には読んでいただいて昔を偲んで欲しい。きっとそこには各々のクロニクルがあることでしょう。