- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09
- メディア: 文庫
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今回の作品はよくできている。いつものように主人公は暗い過去を背負ってきている。資産家だったが借金を背負い全てを失った父、事故死した母、才能と美貌に恵まれながら不治の病で逝った妹、才能も無く父から疎まれて育ち今でも独身で不器用に生きる兄。
そして現在の自分のもう一つの家族。自分の背丈ほどにも育った15の息子と非の打ち所の無い妻。その息子は期待通りに育たず、友人もおらず自信のかけらも無い。ベビーシッターのバイトで行ったその日8歳の可愛らしい一人娘が失踪。(誘拐・いたずら・殺人)疑念がその家族や地域から湧いてくるのは不思議では無い。主人公の父親さえ、我が子を百%信じ切れない。
過去と現在の家族の謎を解き明かす中で、2つの家族が徐々に崩れ始める。そもそも自分は我が子と向き合ってきたのだろうか? 最後に真剣に話し合ったのはいつなのだろうか?
クックは「喪失」と共に「希望」の灯を掲げている時もある。喪失の中に光明を見いだし、救われることもある。本作のラストは・・・
自信の喪失が引き起こす「ひきこもり」や「発達障害」で、親子関係に悩む家庭も多いと思うが、そういう家庭を描いた現代的な作品だと思う。ずいぶん考えさせられる一作になっている。