*18年の時を経て『ビフォア・ミッドナイト』

 95年の『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』、そしてそれから9年後の『ビフォア・サンセット』を見ているファンには待望の、そうで無い人には、「この二人のトークは一体何なの?」と思うだけ・・・もちろん私には製作決定のニュースから、首を長ーーーーく伸ばして待っていた一人。
 「北の国から」みたいに、ずっとどこかの家族やカップルの成長というか年代記みたいのを見る機会ってそうそう無いので、なんかそばで見守っている近所のオジサン・オバサンにでもなったような気分だ。
 若かった二人が一夜の恋に落ち、9年後に再会した時には男は入籍済み。さて今回は・・・? いずれも「朝、陽が昇るまで」「夕日まで」とタイムリミットが限られている。今回は「陽が沈むまで」かぁ・・・。時間の短さに内容が予想できない。と、同時にいくら何でも9年後の「ビフォア」に続く時間帯が無いことに(「ビフォア・ランチ」なんて無いだろうし、最終章なのかな)、なんて切なさを感じながら、いつも通り事前知識無しの鑑賞。
 見始めて最初の車中での長い二人のトーク(こんなに長いセリフをワンカットで一気に納めるの)に、このシリーズが帰ってきた! そう思わずにはいられなかった。こんなに長いセリフを覚えきれるわけも無く、毎回多少のアドリブがあるんじゃない?って話はある。エンドロールでWritten byのところに監督のリチャード・リンクレイターの名の他に、主演のイーサン・ホークジュリー・デルピーの名前も。3人が楽しみながら脚本を書き上げていったシーンを予想すると、何か楽しい。
 2時間弱の映画を家庭で観ると、どうしても経過時間がDVDプレーヤーに表示されちゃう。なので70分過ぎにジュリー・デルピーが上半身脱ぎだしてイーサン・ホークがそこに口づけ始めちゃうと、(こりゃぁこのまま終わらないなぁ・・・)なんて予想できちゃうのが興ざめ。やはり映画館のようなところで没頭するのが正しい見方か。・・・ただね、この作品が持っていた今までの「ありそうでなさそうな微妙なリアリティ。そして知的・ユーモア・切なさ・儚さを兼ね備えた」「夢か現実か分からない(観客に、「ねぇ、この後二人はどうなったと思う?」と訊かれて観た人の答えが違って返ってくるような)世界観」が、今回に限ってはすっごくリアル・即物的な印象がある。
 なので今までの世界観が好きだった人には、「え・・・!!」と裏切られる印象があるんじゃ無いかな。ちょうど、付き合っていた頃のお洒落な雰囲気の若い頃。家に何度か呼ばれて過ごすうちに、掃除が行き届いていない所も見えてしまった、でもまだ若い夢のある頃。そして結婚して、日々の生活にも疲れてきた40代・・・。年齢を重ねることは、リアリティを求めることなのかも知れない。
 ただ、映画を観に来る人はリアリティよりもロマンを求めて(特に本シリーズの場合は特に)来る人も多い。冒頭の車中シーン、後部座席の双子の姉妹が前作『ビフォア・サンセット』のエンドロール後のできごとの結果だと分かっちゃうと、正直私だって(う〜ん・・・)となってしまうのだ。楽しみな映画シリーズがまた1つ終わっちゃったなぁ。