*『雨の降る日は学校に行かない』(相沢沙呼著)

「これ、いいよ。絶対読みなよ」 知り合いの、少しオタクがかったJCが勧めてくる。
 「じゃあ今読んでる本の次に予約ね」
 「絶対だよ。私3回読んだんだから」
「へぇーそんなにいいの?」と改めて本を手に取ってみる。寂しげな女子が一人傘を差して立っている。なかなかジャケットが良い感じだね、とJCに言えば、「そう。ジャケで手にして読んでみたら、すっごく良かったの。よくジャケ買いするよ」
「そう言えば昔はLPのジャケ買いとかあったなぁ。洒落た音楽喫茶では演奏中のLPのジャケットが飾られていたんだよ」
 LPなんて今の子には伝わらないと思えば、お父さんがLPやプレーヤーを持っていて知っていると言う。スクラッチしてメッチャ怒られたとか。うける。
 作者の相沢沙呼、何て読むんだ。シャコで良いのか? 当然寿司ネタのシャコ談義になる。あ、私あれ無理ーとか、エビの仲間なんでしょ、とか。
 こうして(大人が読むには)ちょっときついかな、って思う本を読み始めた。
 少しオタクがかったJCの琴線に触れるくらいだから、つまりはそういう本なのだ。割と今まで読んだことのある、新書「スクールカースト」をうまく小説化したような短編が続く。
 ここに出てくる主人公の少女は誰もが、もがいている。スカート丈がカースト上位の女子より長いって言うだけで言われもないイジメを受ける。男子がそれに輪をかける。学校の先生はイジメに気付かない。小学の時に仲の良かった友達が苛める側につく絶望感。
 改めてこの本を手に取りジャケを眺めれば裏表紙には同じ学校の女生徒が楽しげに歩いている。スカート丈は短い。きっと可愛くて男子にも人気があるんだろう。そして当然の権利のように、真面目で上手く自分を表現できない生徒をバカにして傷つけていくんだろう。
 クラスには必ず一定数いるオタク君・イケテナイ女子は読んでほしい。そして、そんな君たちに言いたいのは、いつかどこかで自分と波長のあう友達や恋人に出会うこと、そして今悩んでいることは大人になると意外にも大したことなかったことだったっていうことがあるんだよ、ってことを覚えておいてほしい。
 「今はこんなに悲しくて 涙も枯れ果てて もう二度と笑顔にはなれそうもないけど そんな時代もあったねと いつか話せる日がくるわ」
 って中島みゆきが、もう何十年も前に歌った。
ところであのJCは今苦しんでいるのだろうか? 芯が強くて弱音を吐かない子だけれど。自分も間違っても優しい言葉なんてかけない。それでも愚痴をきいたり、雑談くらいはできるよ。負けないで。

雨の降る日は学校に行かない

雨の降る日は学校に行かない