*『心の砕ける音』(トマス・H・クック著)

トマス・H・クック

心の砕ける音 (文春文庫)

心の砕ける音 (文春文庫)

原題は『PLACES IN THE DARK』 ジャンル的にはミステリーなのかな。時代はわざと、世界大恐慌直後の東海岸に設定。だからと言って恐慌の描写はほとんど無い。ルーズベルトが時折写真等ででてくるだけだ。
ほとんどが「愛の話」だ。単行本の背表紙の説明を載せる。
ロマンチストの弟は「運命の女」がきっといると信じていた。リアリストの兄はそんな女がいるはずはないと思っていた。美しく謎めいた女が兄弟の住む小さな町に現れたとき、ふたりは確かに「運命の女」にめぐりあったのだ・・・
早めに重要人物が殺害される。その謎を追いながら、「愛の話」が紡がれていく。そこが良い! 登場人物の心の中(80年も前の設定だが、古さは無い。寧ろ現代的・・・当たり前だが)の描写・移ろいがよく描かれている。(そこに読者は犯人や真相を誤る要因・・・・ミスリードと感じるかも知れない) 
外国作品にありがちな文章(邦訳のせい?)や、関係代名詞の訳し方のせいで、gdgdな文章も散見されたが、読み終えたとき、運命に操られた3人の男女のことを思わずにはいられない。しかし、
「彼の他のシリーズと比べて、最後に救いがある。物語は穏やかに繰らす日々を暗示して終わる(解説より)。」
タイトルは今では陳腐な気もするが、内容は良い。「運命・愛」などが好きな人にはお薦めだ。
緋色の迷宮 (文春文庫)

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緋色の記憶 (文春文庫)

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