*キッチン(吉本ばなな著)

キッチン (角川文庫)

キッチン (角川文庫)

先日読んだ「哀しい予感」が良かったので、彼女のメジャーな作品「キッチン」を読んだ。・・・・もっと早く読んでおけば良かったと後悔する。同時収録の「満月−キッチン2」も、最初から当たり前のように続いている作品のようで涙が出るような感動に見舞われた。そして、これは続きでは無いのだけれど「ムーンライトシャドウ」に出てくる、少しエキセントリックな少年や哀しみに立ち向かうこともできずもがいている少女にも深い共感を覚える。
個人的にキッチンが好きだと思ったことは一度も無く、但し使うときはぴっかぴかにして、できることなら自分に使い勝手の良いようにアレンジしたいとか思う。ファミレスで働いたことのある人間ならきっとそう思うはずだ。
小説「キッチン」、ここにも風変わりな親子が出てくる。そして彼女の作品には、いつも優しさに溢れている人物が何人も出てくる。自分もできることならそういう人でいたいと心から希ってみる。
「キッチン2」では、心に響くセリフが何度も出てきた。うんうん、そうなんだよ! と心が叫ぶ。普通の挿話もいい。パイナップルの植木鉢の話なんか、どうして浮かぶのだろう? こういうところが逆に本物の話のように感じて目の前に景色が広がっていく。そして2人が結ばれてくれたならいいな、って希ってみる。「ムーンライトシャドウ」は、突然大好きな人を失う女の子と恋人の弟を軸にした、ちょっとSFも混じった作品だ。そういう雰囲気で物語は進む。読みながら、(死んだ恋人に出会えるとか言うスジはやめて欲しい)と希ってみる。だってそういう作品ばかりだから。キッチンほどでは無いけれど、この作品も良かったよ。さつきも柊も、すぐそばにいて、語り声も匂いさえも漂うほどリアリティがあった。
ちょっとしばらくは(吉本ばなな)にはまってみようと思った。