*『母性』(湊かなえ)

 

母性 (新潮文庫)

母性 (新潮文庫)

 

 


 『告白』とか『白ゆき姫殺人事件』などショッキングなものが多い湊かなえ。売れ線狙いの意図的なものなのか、作家の傾向なのか分からないが、まぁ極端な話が多い。
 母に愛されたいと願う少女が、母親になり娘を持つが、娘に愛を注ぐよりも母に愛されたいとばかり願う。そんな「私」の回想と、愛されない鬱屈を抱えながら愛されたいと願う娘「わたし」の回想、そして語り部は「母性について」で第三者的な視点で、この3者で物語は紡げられていく。だが、どれが本当の真実なのか? 似ているようで微妙に物語はゆがんでいる。
 そこがこの作品の工夫であり、面白さなのだが、夫の実家の舅・姑の理不尽な扱いや、非人道的な発言などが大袈裟に表現されていて楽しめない。今時そんな家庭があるのか?(あるのならなぜ離婚しないのか? 夫は現に浮気もしているし)
 おばあちゃんの家を2万円で貸しながら、夫の実家に世話になるのも変だ。地獄を味わうくらいなら、そもそもおばあちゃんの家に住めば良いではないか? 
 一気に読み切れるのだが、読後に(いや~)な気分になる。読み終わった後に、幸福感に浸る作品にも出会いたいんだ。