耳に残るフレーズ。もうすぐ梅雨。どんより雲。
「雨が降る日が好き」それが彼女の口ぐせ。
梅雨の合間から顔を覗かせる太陽が作る彩雲も好きだったよね。
「雨が降る日はそばにいてね」
「そんなこと言ってたら毎日じゃない。梅雨だよ?」
そう言って僕は毎朝、日々の暮らしのために家を出てた。
もしもあの時少しでも未来が見えていたのなら
一緒に雨の雫を眺めて時を流していただろう。
たとえ明日の暮らしが不安だったとしても。
あの時の貴重な思い出と共に、今なら死ぬことさえいとわないのに。
どうしてなんだろう。どうしてなんだろう。
雨が降ると、窓際に頬杖をつく彼女が見える。
その視線の先はどこにあるの。何を見ているの。
僕は一人つぶやく。でも答えてくれる人はいない。
君はもう、ここにはいない、ずっと、ずっと。
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