*あの楽しかった頃

満月


 最高に頼れるお姉さんを得たように、きみは常に寄り添い幸せそうだった。そんなきみを見ているのは、先輩の立場の私には微笑ましかった。
 きみの独り立ちを期待して、お姉さん役の先輩は、早々にきみから距離を置いた。きみは裏切られたと思ったのかな? そんな事は無いのに。何よりきみの成長と幸せを願っていたのだから。
 一年経って、二人とも疑念の中で、それでも幸せそうな顔をして過ごしている。その不自然さが、みている私には、辛い。
 二人は仲良しだった。そんな君たちを見ているのが微笑ましかった。私はよく思う。清らかなハートの持ち主には、いつまでも幸せであってほしいと。 今日は満月だった。こんな日には月の精にも祈ろう。どうかあの幸せな頃に戻して欲しいと。そんなことは絶対不可能だと、知っている自分にこそ今夜、祈らせて欲しい−