*もしも’50、’60に戻れるのなら

ベレニス・ベジョ


きっとそこには「旧き良きアメリカン」があるに違いない。キューバで現役のような、無駄にデカい2ドアオープンカーが走っていて、女優は無意味に裸体をさらけ出さない。女優の美しさに見とれて、コテコテのラブストーリーに涙するのだ。哀しいかな、その時代を知らない。映画ファンなら、ハリウッドが輝いていたあの時期に戻ってみたい。せめてそんなテイストの映画に出会いたいもの・・・
 かつて新聞の映画評で『タイピスト』の評判の良さを知った。でもそれは前年アカデミー賞を取ったフランス映画『アーティスト』の影響かな、って思ってた。観るのもちょっとためらった。アクション映画やサスペンス映画のように気軽に観られないからね。
 でもさ、観て泣けたよ、心の中でね。こんなにも「旧き良きアメリカン」を体現した映画があったろうか? それもよりによってフランス映画でだ。まるでタイムマシンに乗ったかのよう。主人公が恋に悩み、アルコールを(多分フランスだけれどスコッチなんだろう)飲むシーンに、堪えきれずに焼酎をロックで飲みながら観た。今のお気に入りは、ふんわり鏡月だ。軟派だと笑ってくれ。そうそう、今夜は皆既月食だった、雲で分からなかったけれど。
 すっごく楽しく酔いながら観て、お気に入りの作品になった。この映画の良さを語り合える人が、今はそばにいないのが残念なのだが。
(写真は、助演を演じたベレニス・ベジョ。それが良い役回りなんだよねー。全てがオシャレ!)