*『ボトル・ネック』(米澤穂信)

米澤穂信は『インシテミル』で知り合ってから、数冊読んでいる。本作は文体に若さを感じる青春物語(のように)展開していく。ただし東尋坊から転落しそうになった刹那、姉が生まれて自分は産まれてこなかったパラレルワールドに紛れ込むSF青春物語なのだ。ややこしい。
 どうして姉が生きている(ついでに言えば、死んでしまった昔の恋人や、昏睡状態だった兄も元気だ)世界に来たのか? 以前の世界に戻れるのか? そんな軽い結末を期待していたが、もっともっとダークな、悲しい結末だった。青春時代は時に、存在証明を求めて自省的になることもあるだろうが、「生きてりゃいいじゃん」って事だってあるだろうに。そもそも刹那的に生きている若者の方が世の中には溢れているだろうに。
 19歳位に着想し、小説にできる技量になるまで待っていて10年後くらいに書き上げた、って言うのは、なかなかすごいなって米澤穂信を見直した。
 ただこのタイトルは・・・まぁ物語の大事なキーワードと言えばそうなんだが、もっと他に無かったのかなぁ。

 

ボトルネック(新潮文庫)

ボトルネック(新潮文庫)