*『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬

 本屋に行くとこの見覚えあるジャケットがずっと並んでいた。売れてる理由は!? この時点でどんな話か知らない。何かの情報番組で「アガサ・クリスティ賞」を受賞していると聞いた。ということはミステリーなの? ソ連のスナイパーの話とも聞いたが・・・? 大祖国戦争で勝ち抜いたソ連が、何の因果か、兄弟国ウクライナに大国のエゴで侵略戦争している、2022年だからこそ読むことした。どんな話なのだろう?
 序盤はスナイパーになるきっかけの話。そしてスターリングラード攻防戦。映画『スターリングラード』は主人公ジュード・ロウがスナイパーとして台頭していき、やがて共産主義プロガンダの象徴に祭り上げられていく切ない話なのだが、この映画にインスパイアされすぎじゃ無いの?  と思いながら読み進める。
 この戦いの後、現在ロシアの飛び地になっているカリーニングラード(昔のケーニヒスベルク)での攻防戦になるが、ここからの100ページ強が読ませる読ませる。母を殺した独スナイパーとの運命的な戦い。同じ村出身できっと将来結ばれるであろう兵士との悲しい結末。
 アメリカでもドイツでももちろん日本でも戦士として女性は参戦しなかったわけだが、ソ連のみが女性兵士を誕生させた。その女性兵士の戦後は・・・? そんなこと考えもしたことが無かった。こんな骨太の小説がベストセラーになっているって、日本も捨てたもんじゃない、そう感じた。