*小説「白夜行」

 映画が良かった。主演の堀北真希高良健吾も、それこそ若い時の「旬」の素晴らしいキャスティングだったと思う。今の日本には無い(もちろんバブル時でもない)、高度成長期初期の貧しい大阪が描かれている。きっと、1958年生まれの東野圭吾の原風景に、どこかこのうら寂しい景色があるのだろう。関東で思い出すのは「あしたのジョー」に出てくる泪橋の景色だ。誰もがここから抜け出そうともがき、もがきながらいつまでも抜け出せない。抜け出す夢だけ思い無駄に月日だけが過ぎていく・・・
 映画では世界の暗さが視野に飛び込んでくる。殺人犯は誰なのか? 少年の少女の関係は? 時効後も追い続ける笹垣刑事の執念の源は? 二人は最後に幸せになれるのか? そもそもタイトルの「白夜行」とは・・・?
 映画で感じた世界がそのまま小説でも描かれており、どちらも甲乙付けがたいが、二人が連絡を取り合う映画ならではのシーンは秀逸だと思った。それは推理小説でどこかのシーンでヒントを提示してあるのに、その時は気づかないで通り過ぎているのに似ている。さすが推理小説家。
 ところでこの小説を知り合いの子がたまたま同時に読んでいた。一人は若い男の子。もう一人はエンディングの頃の主人公雪穂と同じくらいの娘さん。
 どんな感想を抱きながら読み切ったのかな? 誰もが幸せを追い続ける権利はある。だけれど人を踏み台にしてまで幸せをつかむ権利は無い。二人ともこの後幸せになれたのかな、なんて。
 氏の作品で大好きな作品は?と訊かれれば「流星の絆」と、これかな・・・。

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)