*『遠藤周作 海と毒薬』

新装版 海と毒薬 (講談社文庫)

新装版 海と毒薬 (講談社文庫)

 先日遠藤周作原作の『沈黙』に感動したので、1冊読んでみようかと手に取った。そもそも知らないタイトルばかり。裏表紙の粗筋が面白そうなので手にしたのが、『海と毒薬』。名作だとは知らずに読んだ。
  太平洋戦争中、捕虜の米兵を生きたまま(もちろんエ−テルで麻酔はしているが)実験材料として殺した実際あった事件を題材とした小説らしい。本当にあったの? 場所や固有名詞が微妙に違うのだけれどあったようだ。戦時下・・・とは、言え科学者や医者のような頭の良い人が、なぜ、良心の呵責も見せず人を殺せるんだろう。陸軍軍人と医師との会話が妙にリアリティがある。殺した米軍人から取った肝臓を食べるために持ってこさせる(食するシ−ンは無い)。戦争の何がダメだって、こういう非人間的なことが(小説では医師の一人は戦後自殺したとある)おきることだろう。
 「沈黙」を通して、遠藤周作がクリスチャンだと知ったが、本作のテーマが「神なき日本人の罪意識」。今の若い人が読むか?と問われれば「う〜ん」と唸ってしまうが、医師を目指すほどの人なら20歳前後で読んでよかろう。文体が昭和の真ん中辺!って感じがするが、そのくらいは何とかしろ。