*『光待つ場所へ』(辻村深月)

 辻村深月は読みやすい。『光待つ場所』は短編集なのだが、収録作は「しあわせのこみち」「チハラトーコの物語」「樹氷の街」の三作だ。
 「しあわせのこみち」は辻村深月作品としては爽やかな作りだ。読んでいて(あぁ、そういう風に人は思うのか)(天才ってそういう風に思うんだ)と気づかされる作品だ。三浦しをんの『光』直後に読んだので、とても心が洗われた。
 「チハラトーコの物語」は(女の子って大変だ)(そして面倒くさい)そんな風に思う。外国人でアイデンティティーがしっかりしている女子ってたまにいるじゃない? 何やらせてもそこそこできる子。そういう子は「頭取りたがるヤンキー系女子」がいても関係ないんだろうな。そういう子が羨ましい。
 「樹氷の街」の出だしに合唱曲「樹氷の街」の歌詞が出てくる。当初サラッと流し読みしたんだが、気づけば中二の合唱コンクールで歌ったよな。女子がおとなしいクラスで、なのになんでこの曲選ぶかなぁ!? って歌だった。ソプラノが高音頑張ってくれればつぶった瞳の向こうに一面の銀世界が広がる、そんな歌だった。ちなみに小説では中三設定だ。歌う順番が1組から順々・・・って、そんなことあるかいっ! これって実行委員による抽選だろっ!? それとも山梨ではそんな不公平がまかり通っているのか?
言いたいことは色々あるけれど、外出禁止の1日にはうってつけの佳作なのだ。「しあわせのこみち」だけでも時間があれば読んでほしい。

 

光待つ場所へ (講談社文庫)

光待つ場所へ (講談社文庫)

  • 作者:辻村 深月
  • 発売日: 2013/09/13
  • メディア: 文庫