*『物語のおわり』湊かなえ

 湊かなえは安定感があるので迷った時にはお薦めだ。購入が北海道旅行前だったので、ペラペラッとめくった時に、美瑛や富良野など今回行ったところがあったからというのが、購入の決め手かな。
 短編集は本当に短編が集まっているものと、夫々の短編が関係し合っているものとだ。この本は後者。第一作目、小学生の女の子が好きな小説を書いていく1人称の話が良い。しかしこれは少女が書いた本なのか、それともこの少女の周りの第三者が書いたものなのか、どちらか分からなくなってくる。その少女が書いた未完の本(というよりまだゲラの段階なのだが)が、未来の選択で悩んでいる者達にバトンのようにつながっていく。ある者は家業とカメラマンとの二者択一に悩み、あるキャリアウーマンは、自分はキャリアを選び、夢を選んだ恋人と別れた。その選択に悔いは無いのか?と悩んでいる。
 実はあと1個の短編を残した段階でこれを書いている。冒頭、パン屋の小学生の娘の後日譚だろうか? 小説家をめざして東京行きを決意した田舎駅で、待ち構えていた恋人で話は終わっていて(しかもそこで呼び戻された形跡があるけれど・・・物語はあっという間に2~30年経過している)、本のタイトル「物語のおわり」はどうなるんだよ? と結果が知りたい。でも読み終わるのも勿体ない。
 文中で(人が誰も死なない)、だけれど感動できる本が読みたい、っていうmetooの願望は1つ解消されたと思う。この本で。