*『オーダーメイド殺人クラブ』(辻村深月著)

  中二病真っ只中の主人公小林アン。バスケット部に属し、学級内のスクールカースト上位にありながら、女子間の人間関係に患んでいる。そのせいでは無いが自殺願望があり、よりによって昆虫系と揶揄する徳川君に殺害を依頼する。依頼日は12月第一週日曜日。刻々とその日が迫ってくる。中高生に圧倒的人気のある辻村深月が、主人公を殺す(しかもバラバラ殺人での殺害も依頼している)訳がない。そう思いながらも自殺回避の方法が知れない。
 物語の軸は自殺(嘱託殺人)なのだが、前半は女子特有の仲良しグループ内での権力争いや仲間はずれなどが多々あり、中高生時代の女子間の悩みを語らせたら、右に出るヒトはいないな。「いじめだ!」とよく騒ぐ大人や教育評論家などに是非読んでもらいたい。こういう事例を何度か実際見てきたよ。
 中盤は恋愛関係も交えながら幾つかのエピソードが出てくるんだが、殺害の予行も兼ねた写真撮影会を秋葉のレンタル撮影所を借りて二人で出かけてしたり、若い女性音楽教師とクラスの頂点に位置する男子とのエピソードでは、中二の誰かに「エロい」と言わせたり、なるほど中2にはそういう性の目覚めみたいなものもあるよな。
 終盤はいよいよこの広がった話を集約させる作業だ。まぁ読んでみると良い。辻村深月らしく読後に心温まる物語だ。
 おそらく中高生向け作品だから、図書室に置かれる本だと思うが、一歩間違えると自殺願望の子たちが行為に及ぶかもしれない危うさを孕んでいるな。だって自殺願望の少女って、実際ものすごく多いんだもの(その中で実際死んじゃう子は少ないんだけれど、それでも確実に存在する)。